新素材で新製品、その切削ラインを構築する
入社3年目にして、大きなプロジェクトを任されることになりました。それはEV車向け新製品の生産ラインを立ち上げること。製品はアルミ製。鋳造加工されたアルミの粗材を、切削加工で仕上げていく加工ラインの開発です。アイシン福井にとってアルミという素材は新分野。どんな問題が出てくるのか、手探り状態で知見を積み重ねながらの仕事です。
「ここでやるから」と示されたのは工場の一角の空間。ラインのレイアウトを決め、床のコンクリート打ち工事からのスタートでした。そこに購入した切削設備を据え付ける。ここから1年数ヵ月にわたる試行錯誤の日々が始まったのです。
外乱の影響を排除する加工方法を開発せよ!
アルミというのはとても厄介な素材です。何しろアルミの線膨張係数は鉄の2倍。温度変化による変形をとても受けやすい。そういう素材の表面を削りネジ穴をあけ内部をくり抜く…など膨大な加工を施さねばなりません。しかも要求精度はとても厳しく、幾何公差はミクロン単位。数十個程度の生産数ならどうということはありませんが、この加工を数万個というオーダーとなると、まったく異次元の話となります。さあどうする…。
特に温度への対応は大きな課題でした。例えば工場の気温、切削時に注ぐクーラント(切削油)の温度、切削刃物を加工物に当てる圧力の強弱によって変化する摩擦熱…。こうした温度という「外乱」の影響をどう排除していくか。例えば加工マシンの排熱を利用して素材の温度を調整するなどの工夫も考えました。他にも、調達した素材そのものの組成も製造ロットによって微妙に違う可能性もある。これらイレギュラーを一つ一つ検証し、対処方法を導きながらの開発でした。
工夫は無限大!
弊社にとって初体験となるアルミ切削加工ラインは立ち上がったばかり。理想とする「不良品ゼロ」には、まだまだ多くの工夫を積み重ねていかねばなりません。これからがいわば本番。「想定外の事象」は必ず起きる。けれどそれが難問であればあるほど、工夫のしがいもある。やりがいのある仕事だと思います。